猫の病気で多い特発性(とくはつせい)膀胱炎


猫の尿路系疾患にはさまざまな種類がありますが、中でも症例が多い猫の特発性膀胱炎は、下部尿路に影響を及ぼす一般的な疾患の一つで、非常に多くの割合を占めす疾患です。

今回は、猫の特発性膀胱炎についてご紹介します。
この病気は結石症や細菌感染がなく、原因がはっきりしない膀胱炎です。症状は下記のようなものがあります。

  1. 頻繁な排尿
  2. 排尿時の痛みや不快感
  3. 血尿(尿に血が混じる)
  4. 少量の尿しか出ない
  5. 排尿しようとしても出ない
  6. トイレ以外の場所での排尿
  7. 過度のグルーミング(特に腹部や陰部)

猫が特発性膀胱炎になる要因

特発性膀胱炎の原因は多岐にわたり、以下のような要因が考えられます。

  • ストレス:環境の変化、家族の変動、新しいペットが加わるなど。
  • 食事:特定のフードが尿のpHを変化させることがあります。
  • 水分摂取不足:尿が濃くなり、結石が形成されやすくなります。
  • 遺伝的要因:一部の猫は遺伝的に猫下部尿路疾患(FLUTD)を発症しやすい傾向があります。

診察と検査内容

猫の特発性膀胱炎の診断には、検査で特異的な原因が認められないため除外診断になります。除外診断のため以下の検査が行われることがあります。

1.病歴の聴取

飼い主さまから症状、食事、排尿習慣、行動変化、環境の変化などについて詳しく聞き取りを行います。

2.身体検査

全身状態を検査します。特に腹部を触診して膀胱の状態を確認し、膀胱が腫れていないか、痛みがないかどうかを調べます。

3.尿検査

一般的に以下の尿検査を行います。

  • 尿沈渣検査:顕微鏡で尿中の結晶、細菌、白血球、赤血球などを確認します。
  • 尿比重測定:尿の濃度を測定し腎機能の状態を調べます。
  • 尿pH測定:尿の酸性度を測定し結晶の形成リスクを判断します。
  • 尿培養:尿を培養して細菌感染があるかどうかを確認します。

4.画像検査

一般的に以下の画像検査を行います。

  • X線検査:膀胱結石や他の異常が無いかを確認します。
  • 超音波検査:膀胱や腎臓の内部構造を詳細に確認します。

治療について

猫の特発性膀胱炎は、自然寛解(一時的に治ること)と再発が多いため、治療は症状の緩和と再発予防を中心として行われます。治療方法は個々の猫の状態や原因に応じて異なりますが、以下のようなアプローチで行うのが一般的です。

1.薬物療法

  • 鎮痛薬:痛みを和らげるために使用します。
  • 抗不安薬:ストレスが原因と考えられる場合に使用します。

2.食事療法

  • 特別な尿路管理用フード:尿のpHを調整し、結晶や結石の形成を防ぐための処方食を使用します。
  • 水分摂取の促進:ウェットフードを与える、フレーバー付きの水を提供するなど、水分摂取量を増やす工夫を行います。

3.環境の改善

  • ストレス管理:ストレスを軽減するためには環境の改善が重要です。
    • 複数のトイレ(猫の頭数+1個が理想)を用意し、清潔に保つ。大きさは大きめ(体重×1.5倍)が目安です。
    • お気に入りの場所に隠れ場所や休憩場所を設ける。
    • フェロモン製品(フェリウェイなど)を使用して、リラックスさせる。
    • 日常のルーティンを安定させる。

4.水分摂取の促進

  • 新鮮な水を常に提供:猫が飲みやすい場所に複数の水皿を置きます。
  • フレーバーウォーター:チキンスープやツナジュースなどを薄めたものを与えます。

5.運動と遊び

  • 定期的な運動:遊びを通じて運動量を増やし、ストレスを発散させます。
  • おもちゃや爪とぎポスト:興味を引くおもちゃやで遊ばせたり爪とぎポストを用意します。

再発予防のための対策について

猫の突発性膀胱炎は再発しやすい病気です。再発率は高く、1年以内に約50%の猫が再発すると報告されています。再発を防止するには、治療と同様にストレス管理、適切な食事管理、水分摂取の促進、運動と遊び、定期的な健康チェックが重要です。

これらの対策を徹底することで、再発のリスクをできるだけ低くすることが可能です。 しかし、完全に再発を防ぐことは難しいため飼い主さまの継続的なケアと注意が必要です。

 

 

〜岡部獣医科病院〜

岡部獣医科病院は昭和21年に開院した動物病院です。

ペットとその家族が最良と思える治療へ導くことを心がけています。 次世代の獣医師教育にも力を入れ、スタッフそしてその家族も幸せになれる病院を目指しています。 症状が見られた場合は、お気軽に当院にご相談ください。