去勢手術と避妊手術について

家族の一員でもあるペットが永く健康に暮らすためには、避妊や去勢手術も大切です。 不妊手術を行うことによって、さまざまな病気の発症リスクを抑えることにつながります。 また生後5〜6ヶ月の手術をおすすめしています。

当院の去勢手術と避妊手術

年間平均1000件以上の手術件数

年間平均1000件以上の手術を行っているため、さまざまなケースを想定して行うことができます。これまで培ってきた経験と知識で、安心で安全な手術に努めます。

麻酔中のモニタリング

手術を悩まれる時、全身麻酔が不安の種になると思います。 当院では心電図・血圧・酸素飽和度・呼吸数・酸素濃度・麻酔濃度・炭酸ガス濃度のモニタリングをしっかり行います。 また温風式加温マットを使用し術中の体温低下を防ぎます。

希望の方には体内に糸を残さない手術も可能

「切る」と「止血」を同時に行う最新機器を導入し、糸に対する体内のアレルギーを防ぐと同時に手術時間の短縮につなげています。

去勢手術と避妊手術の
メリット・デメリット

去勢手術(精巣摘出) 避妊手術(卵巣子宮摘出)
メリット 去勢手術(精巣摘出) 繁殖能力をなくし、攻撃性の低下が期待できる
問題行動を抑制する効果がある(※)
・マーキング
・マウンティング
病気の予防になる
避妊手術(卵巣子宮摘出) 望まれない妊娠を避けることができる
問題行動を抑制する効果がある(※)
・マーキング
・発情期の放浪&鳴き声
・不安行動
病気の予防になる
デメリット 去勢手術(精巣摘出)/ 避妊手術(卵巣子宮摘出) 全身麻酔
術後3日間の痛み
太りやすくなる
尿失禁(まれ)

※ 問題行動の期間が長いと手術に対する反応性は悪い

発症を予防できる病気

去勢手術(精巣摘出)

前立腺肥大

精巣から分泌されるホルモンの異常により前立腺の肥大が起こると、排便異常や排尿困難を引き起こします。

精巣腫瘍

精巣の悪性腫瘍はリンパ節や肺に転移を起こします。 若齢期に去勢手術を行うことで、完全に予防することができます。

肛門周囲腺腫

未去勢の雄犬に頻発する良性腫瘍です。ホルモンとの関連性が示唆されているため、去勢手術が治療の第一選択となります。

会陰ヘルニア

直腸の周りの筋肉が萎縮することでヘルニア孔が生じ、脂肪組織や膀胱などが脱出する病気で、 未去勢の雄犬に好発します。 生活の質を維持し、合併症を防ぐには整復手術が必要になります。

避妊手術(卵巣子宮摘出)

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍のうち、犬では約 5 割 、猫では8~9割が悪性といわれています。 若齢期に避妊手術を行うことで、格段に予防率が上がります。 詳細は下記のグラフを参照してください。

子宮蓄膿症

子宮内に膿が貯留する疾患です。 子宮の中の菌が産生する毒素により合併症が引き起こされると、死に至ることもあります。 根治には子宮卵巣全摘出が必要です。

卵巣嚢腫

卵巣が腫れてくる病気で、ホルモンの異常を伴うため発情の持続あるいは無発情などを生じます。 ホルモン剤による治療も行われますが、その成功率は必ずしも高くないこと、また、成功しても発情ごとに再発する可能性が高いことから、早期に外科手術を行うことが推奨されます。

顆粒膜細胞腫

顆粒膜細胞という卵胞の細胞に由来する腫瘍で、転移を起こす悪性の場合もあります。 早期の外科手術により予後は良好ですが、進行して転移が起きている場合、化学療法が必要になります。

糖尿病の悪化

発情期に分泌されるホルモンがインスリンの働きを大きく妨げ、糖尿病を悪化させることがあります。

避妊手術における乳腺腫瘍の予防効果

乳腺の悪性腫瘍は、メスの犬猫で最も多い癌の一つです。避妊手術のタイミングが早いほど、病気のリスクは軽減されていきます。

犬のグラフ
猫のグラフ

手術までの流れ

当院では術前検査で健康状態をチェックしてから手術を行います。血液検査で麻酔のリスクを総合的に判断して手術日を決めていきます。

事   項 食   事 飲 水
手術数日前 術前の血液検査を行います。 検査の前日20時以降絶食
手術前日 いつも通り過ごして下さい。 20時以降絶食
手術日 午前中来院して下さい。午後から手術です。
夕方面会も可能です。
不可
手術翌日 診察時間内に退院です。 少量からスタート
手術10日後以降 抜糸(犬のみ)

去勢・避妊手術Q&A

去勢手術(精巣摘出)

Q1 去勢手術のメリットは?

望まない妊娠を避けられる、病気の予防になる(Q3参照)、問題行動の抑制になる場合があるため

Q2 去勢手術のデメリットは?

肥満、毛刈りした部位の毛が生えない、麻酔のリスクがあります(必ず起こるものではありません)。

Q3 去勢手術はどんな病気の予防になるの?

精巣の腫瘍、前立腺肥大症、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫

Q4 去勢していないと起こる問題行動は?
  • 犬:マウンティング、攻撃行動、徘徊など
  • 猫:スプレー、ケンカ、激しい鳴き声
Q5 問題行動は去勢手術をすると治るの?

発症後、速やかに避妊去勢手術を実施することにより改善されることがあります。必ず改善されるものではありません。

Q6 去勢手術はどんな手術なの?

精巣を摘出します。

Q7 去勢を行うのに適切な年齢はいつなの?

統一された見解はありません。当院では早期に安全な去勢手術を行うために、5〜6ヶ月齢時に行うことを推奨しています。

Q8 一般的な手術費用の相場は?

一般的な手術費用の相場(事前検査費除く)

  • 犬の去勢手術:20,000〜30,000円
  • 猫の去勢手術:15,000〜25,000円

※当院の手術費用は料金表をご覧ください。

Q9 潜在精巣とは?

胎児の時に腹腔内にある左右1つずつの精巣は、だいたい生後6ヶ月以内に陰嚢内に下降します。陰嚢に下降せず腹腔内(または皮膚の下)に残った状態が潜在精巣です。

Q10 潜在精巣の場合、生殖能力はありますか?

両方とも下降しない場合、生殖能力はありません。片方が下降していれば生殖能力はあります。しかし、遺伝性の疾患であるため交配には適しません。

Q11 潜在精巣はそのままにしていていいの?

潜在精巣の精巣腫瘍発生率は通常の犬の3~14倍といわれているので、予防的な意味も含めて精巣摘出を実施した方が良いです。

Q12 なぜ去勢手術をすると太るの?
  • 基礎代謝率の減少
  • 行動範囲が狭まる
  • 食欲は変わらないか増加する
Q13 去勢後の肥満の対策は?

適切な食事管理及び運動管理、避妊去勢した子用のフードを利用するなどの対策があります。

Q14 雄も去勢後に尿失禁になることはあるの?

稀ですがあります。

Q15 去勢手術を行っても精巣腫瘍が発症することはある?

手術の手技によっては稀ではありますがありえると文献で報告されています。

Q16 去勢をすると尿道閉塞しやすいの?

去勢後も尿路の大きさは変わらないが、詳細はわかっていません。

避妊手術(卵巣子宮摘出)

Q1 避妊手術のメリットは?

望まない妊娠を避けられる、病気の予防になる(Q3参照)、問題行動の抑制になる場合があるため

Q2 避妊手術のデメリットは?

肥満、尿失禁、毛刈りした部位の毛が生えない、麻酔のリスクがあります(必ず起こるものではありません)。

Q3 避妊手術はどんな病気の予防になるの?

乳腺腫瘍、子宮蓄膿症、膣過形成、膣脱、子宮脱、偽妊娠(犬)、子宮水症、子宮粘液症、膣腫瘍

Q4 避妊していないと起こる発情に伴う問題行動は?
  • 犬:精神的にやや不安定になることがあります、発情出血、偽妊娠、乳汁の分泌
  • 猫:独特な姿勢と激しい鳴き声
Q5 問題行動は避妊手術をすると治るの?

発症後、速やかに避妊去勢手術を実施することにより改善されることがあります。必ず改善されるものではありません。

Q6 避妊手術はどんな手術なの?

卵巣と子宮を摘出します(卵巣のみを摘出する方法もあります。)

Q7 避妊手術をしたのに子宮の病気になりました。子宮の取り残しが原因?

子宮の取り残しではなく、卵巣の取り残しが考えられます。卵巣が完全になくなった子宮は6〜12ヶ月後には細いヒモ状になり、年月の経過とともにより細くなり、痕跡程度になります。

Q8 避妊手術を行うのに適切な年齢はいつなの?

統一された見解はありません。当院では早期に安全な避妊手術を行うために、5〜6ヶ月齢時に行うことを推奨しています。

Q9 一般的な手術費用の相場は?

一般的な手術費用の相場(事前検査費除く)

  • 犬の避妊手術:30,000〜50,000円
  • 猫の避妊手術:20,000〜35,000円

※当院の手術費用は料金表をご覧ください。

Q10 避妊手術はどのくらい乳腺腫瘍の予防になるの?

手術を行う時期で、乳腺腫瘍の予防効果が変わります。犬では、初回発情前の避妊手術では99.5%、1回発情後92.0%、2回発情後74.0%、2.5歳齢以降効果なし。猫では、6ヶ月齢まで91.0%、7~12ヶ月齢86%、13~24か月齢11.0%、24ヶ月齢以降効果なし。

Q11 手術後に乳腺が腫れました

避妊手術を黄体期後半に行うと、卵巣摘出によって血中プロジェステロン(妊娠維持をするホルモン)値の急激な低下がおこり、プロラクチン(プロジェステロン分泌を維持するホルモン)が脳から分泌されます。このプロラクチンは乳腺を刺激する作用も持っているため、乳腺が腫れることがあります。また、乳汁分泌、いつもより神経質になる、おもちゃを自分の子供だと思って子育てをはじめるといった症状が現れることがあります。これらの症状は内服薬により5〜7日間で消失します。

Q12 なぜ去勢手術をすると太るの?
  • 基礎代謝率の減少
  • 行動範囲が狭まる
  • 食欲は変わらないか増加する(エストロジェンには食欲抑制効果があるため)
Q13 避妊手術後の肥満の対策は?

適切な食事管理及び運動管理、避妊去勢した子用のフードを利用するなどの対策があります。

Q14 避妊手術後に尿失禁となる確率は?
  • 小型犬:稀
  • 大型犬:5〜20%

体重15kg以上の犬では、体重15kg未満の犬と比較して約7倍の発症率です。生後3ヶ月以内に避妊手術を行った雌犬は発症率が高くなります。

Q15 避妊手術後に尿失禁になるタイミングは?

手術直後に発症することはなく、手術後1~4年経過して発症しますが、その多くは3年以内に発症します。

Q16 避妊手術後の尿失禁の治療法は?

内服薬があります。生涯投薬が必要な場合もあります。

Q17 猫も避妊手術後に尿失禁になることはある?

報告はないです。

Q18 発情している時に避妊手術しない方が良いのはなぜ?

発情中は血管が太くなっているために手術中の出血が多くなる可能性があるからです。発情が終わってから2ヶ月は手術をすると乳腺が腫れることがあります(Q11参照)。

診療の流れ

当院では事前にしっかり問診と身体検査を行い、飼い主様の不安と疑問が解消できてからの処置となります。少しでも不安や疑問がある場合は何でも聞いて下さい。 解決できるまで何度でも説明します!

1.診察

まずは問診で内容を確認し、触診や視診、聴診、検温等、身体検査をさせていただき、現在の状態を把握します。 その中で必要となる処置や検査について、ご相談させていただきます。

2.検査

血液検査やレントゲン検査、超音波検査など様々ありますが、必要な検査のみ実施します。

3.治療

診察や検査結果をもとに、病気の診断や原因をお話しします。
その上で、これからの対策や治療内容を分かりやすくご説明致します。

4.会計&次回予約

診察が終わりましたら受付で会計をお願い致します。
再診が必要な場合は、会計時もしくはお電話にて、次回のご予約をお取り下さい。