フィラリア予防はなぜ大切? 犬と猫の飼い主さんが知っておくべきこと

ペットの健康を守るために、フィラリア症の予防はとても重要です。特に近年では 通年予防 の必要性が指摘されており、犬だけでなく猫のフィラリア症も問題視されています。今回のコラムでは、飼い主の皆さんが知っておくべきフィラリア予防のポイントを詳しく解説します。
① フィラリア症とは?
フィラリア症(犬糸状虫症)は、蚊を媒介して犬糸状虫が体内に侵入し、心臓や肺の血管に寄生する病気です。放置すると呼吸困難や心不全を引き起こし、最悪の場合は命を落とすこともあります。 特に犬は感染が進行しやすく、猫の場合は少量の感染でも重篤化する可能性が高いと言われています。 この病気は、月に一度の投薬で予防可能です。しかし、最近の温暖化の影響で蚊の活動期間が長くなっているため、予防のタイミングが重要になっています。
当院の推奨する予防期間について
2025年度の時点で当院では通年投与はあくまで選択肢の一つとして考えております。 現時点での推奨プランは以下の通りです
- フィラリア予防:4月~12月(最低でもこの期間の予防を推奨)
- ノミ・ダニ予防:通年での予防を推奨
なお、通年投与をご希望の場合もご対応可能です。 フィラリア予防とノミ・ダニ予防を一体化した合剤の使用など、予防の選択肢を増やしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
② なぜ通年投与が推奨されるようになったのか?
以前は 「蚊が発生する時期だけ予防すればよい」 と考えられていましたが、近年では 通年予防 が推奨されるようになっています。その理由として、以下の2つが挙げられます。
- 温暖化による蚊の活動期間の拡大
近年、気温の上昇により、蚊の活動期間が「春~秋」からさらに拡大しています。 以下のグラフをご覧ください。 従来は5月から10月が主な予防期間でしたが、現在は3月から翌年1月まで蚊が発生している地域もあります。このため、季節限定の予防ではリスクを完全に防ぐことが難しくなっています。
- 世界的な推奨
米国犬糸状虫学会(American Heartworm Society)は、犬や猫に対して「1年を通じた予防」を推奨しています。これにより、地域差や活動期間の変化に関係なく感染リスクを減らすことができます。
③ 通年投与のメリットとデメリット
メリット
感染リスクを確実に予防できる。 毎年の血液検査が不要になり、病院が混雑する時期に来院する手間を省ける。 ノミ・ダニ予防と一体型の薬を使えば、複数の感染症を同時に予防可能。
デメリット
年間の予防コストが高くなる場合がある。 血液検査を行わない場合、ついでに実施していた健康診断を逃す可能性がある。デメリットについては、かかりつけの獣医師に相談しながら予防プランを立てることで対応できます。
ノミ・ダニ予防とフィラリア予防の「合剤」を使った通年予防の提案
現在、ノミやダニの予防薬は通年での使用が一般的になっています。そのため、ノミ・ダニ予防とフィラリア予防が一体化した合剤を通年使用することが非常におすすめです。
合剤を使うメリット
- 利便性:1つの薬で複数の予防ができるので、飼い主さんの負担が減ります。 包括的な予防:フィラリア症だけでなく、ノミやダニによる感染症も一緒に防げます。
- 温暖化に対応:蚊の活動期間が広がる中で、通年予防がリスク回避につながります。
こんな飼い主さんにおすすめ
- 忙しくて毎月の投薬を忘れがちな方
- 多頭飼育で薬の管理が大変な方
- 愛犬・愛猫を一度の投薬で効率よく守りたい方
まとめ
フィラリア症は、愛犬・愛猫の健康を脅かす重大な病気ですが、予防をしっかり行うことでリスクを大幅に減らすことが可能です。特に温暖化による蚊の活動期間の拡大を考慮すると、通年での予防がこれからのスタンダードと言えます。 ただし、当院では2025年度の現時点で通年投与をあくまで選択肢の一つとし、最低でも4月~12月のフィラリア予防を推奨しています。ノミ・ダニ予防については通年投与を推奨しておりますので、飼い主の方のライフスタイルに合わせて適切なプランをご提案いたします。 予防プランに関する疑問や不安があれば、当院にお気軽にご相談ください。愛犬・愛猫にとって最適な健康管理を一緒に進めていきましょう。 岡部獣医科病院では、猫に配慮した診察や待合を心掛けております。