猫の慢性腎臓病について

最近、愛猫の元気がなくなったと感じることはございませんか?今回のコラムでは猫の病気の中でも多い腎臓の病気、慢性腎臓病について解説します。
1. 猫の慢性腎臓病(CKD)とは?
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease, CKD)は、猫にとても多い病気のひとつで、腎臓の機能が少しずつ低下していく病気です。一度失われた腎機能は元に戻らないため、早期発見と適切な管理が重要になります。
2. なぜ猫は腎臓病になりやすいの?
あまり知られていませんが、猫は元々乾燥地帯出身の動物で、少ない水分で生きられるように進化してきました。そのため、水をあまり飲まない傾向があり、腎臓に負担がかかりやすいのです。加齢とともに腎臓の細胞が少しずつダメージを受け、腎機能が低下していきます。
3. 慢性腎臓病の症状
初期段階では目立った症状がありません。しかし、腎臓の機能が30%以下になると、次のような症状が現れます。
- 水をよく飲む・尿の量が増える(初期症状)
- 食欲不振・体重減少
- 元気がなくなる
- 嘔吐や下痢
- 口臭が強くなる(アンモニア臭)
- 被毛のツヤがなくなる
これらの症状が出たときには、病気がかなり進行していることが多いため、定期的な検診が重要です。
4. 7歳以上の猫は年2回の腎臓病検診がおすすめ!
猫の腎臓病は 早期発見がとても重要 ですが、初期の段階では症状がほとんど見られません。そのため、7歳以上の猫は年に2回、腎臓病の検診を受けること が推奨されています。理由は以下のとおりです。
- 腎機能は70%以上失われるまで症状が出にくい
→ 早期発見には定期検査が必要です。 - 血液検査や尿検査で異常を見つけられる
→ 進行前に治療を始められます。 - 高齢になるほど腎臓病のリスクが高くなる
→ 7歳を過ぎると腎臓病の発症率が上がるとされています。 - 治療の選択肢が増える
→ 早期なら食事療法やサプリメントで進行を遅らせることができます。
5. 腎臓病の検査内容
動物病院での腎臓病検診では、以下のような検査が行われます。
- 血液検査(BUN・クレアチニン・SDMAなど)
- 尿検査(尿比重・蛋白尿の有無など)
- 超音波検査(腎臓の形状確認)
特に「SDMA」 は、腎臓の機能低下を早期に検出できる新しい指標で、クレアチニンよりも早い段階で異常を見つけられるため、7歳以上の猫にはおすすめです。
6. 猫の慢性腎臓病の治療と管理
腎臓病は完治する病気ではありませんが、早期発見・適切なケアにより進行を遅らせることが可能です。
- 食事療法
・腎臓病用の療法食(タンパク質・リンの制限、オメガ3脂肪酸などを含む)
・水分をしっかり取る - 内服薬・サプリメントを活用
・リン吸着剤(腎臓に負担をかけるリンの吸収を抑える)
・血圧を下げる薬、蛋白尿をコントロールする薬(腎臓を守るため)
・腎機能をサポートするサプリメント(ω-3脂肪酸、アミノ酸など) - 点滴治療(皮下補液)
・腎機能が低下してきたら、自宅で点滴をすることも可能です。
・脱水を防ぎ、腎臓への負担を軽減させます。
7. まとめ
- 猫の慢性腎臓病はとても多い病気で、7歳を過ぎると発症率が高くなる
- 症状が出る前に早期発見することが重要
- 7歳以上の猫は年に2回、腎臓病の検診を受けるのがおすすめ
- 食事療法や適切なケアで進行を遅らせることが可能
飼い主さんの「早めの気づき」と「こまめなケア」が猫ちゃんの寿命を延ばすカギになります!気になることがあれば、早めにご相談ください。岡部獣医科病院では、猫に配慮した診察や待合を心掛けております。