猫や犬、そして人にも感染する「SFTS」について


SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?

近年、人と動物の両方に感染する「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」が注目されています。SFTSは、マダニが媒介するウイルス感染症で、発熱、白血球や血小板の減少、消化器症状などを引き起こし、重症化すると命に関わることもある病気です。

特に猫では、感染すると症状の進行が非常に早く、致死率は約60%と高いことが分かっています。一方、犬も感染することがあり、発症した場合には重症化することがあるため、猫・犬いずれも注意が必要です。また、感染した動物の体液や排泄物を介して人に感染した事例も報告されており、動物から人への感染防止にも十分な対策が求められます。

今回はそんなSFTSについて詳しく解説していきます。


千葉県柏市の現状と近隣地域の発生状況(2025年7月現在)

現在、千葉県柏市内でのSFTS感染例(動物・人ともに)は報告されていませんが、柏市でも市民への注意喚起が行われており、警戒が必要な感染症とされています。

特に注目すべきは、2025年に茨城県で猫および犬のSFTS感染が確認されたことです。これは関東地方で初のペット感染例であり、今後柏市を含む周辺地域でも感染が発生する可能性があることを示しています。


柏市近隣に住んでいる私たちは、どれくらいSFTSを意識すべき?

茨城県で猫と犬のSFTS感染が確認されたことで、関東地方においてもこの感染症は「身近なリスク」となってきました。現時点で柏市内の発生報告はありませんが、マダニによる感染は地域を問わず起こり得ます。過度に不安になる必要はありませんが、「室内飼育」「マダニ予防」「体調変化の早期発見」といった基本的な対策を意識することで、ペットとご家族の健康を守ることができます。


猫と犬の飼い主様へ:こんなとき
要注意!

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は、発症すると急激に悪化することがある感染症です。特に猫では致死率が高く、犬も重症化のリスクがあります。以下のような変化があれば、できるだけ早く動物病院へご相談ください。

猫の注意すべきサイン

  • 最近、外に出たあとからなんとなく元気がない
  • ごはんを食べない日が続く
  • 体が熱い気がする(発熱)
  • 白目や耳の内側が黄色く見える(黄疸)

犬の注意すべきサイン

  • 外での活動後から、少しぐったりしているように見える
  • 発熱が疑われる(触ると熱い)
  • 元気や食欲がない状態が2日以上続く

SFTSでは、発熱や元気・食欲の低下がもっともよく見られる初期症状です。症状は感染後しばらくしてから現れることが多いため、普段と違う様子に早く気づくことが大切です。


家庭でできる予防策

  • 猫は完全室内飼育を基本とし、外出によるマダニの接触を避けましょう。
  • 犬にはマダニ予防薬を定期的に使用し、散歩後は全身にマダニが付いていないか確認しましょう。
  • 草むらや藪など、マダニが多く潜む場所への接触は避けましょう。
  • 「元気がない」「食欲がない」「目や皮膚が黄色い」などの症状が見られた場合は、すぐに動物病院を受診してください。

人への感染を防ぐために(SFTSが疑われるペットがいる場合)

SFTSウイルスに感染した犬や猫の血液、唾液、排泄物などから人に感染することがあります。特にペットがSFTSを疑われる場合は、以下の点に注意してください。

感染防止のための注意点(※SFTSが疑われる場合に限る)

  • ペットの体液などに触れる際は、手袋・マスク・ゴーグル(または眼鏡)を着用してください。
  • トイレ、食器、タオルなどは次亜塩素酸ナトリウムまたはアルコールで消毒しましょう。
  • 自宅での看護は避け、動物病院での隔離入院を検討してください。
  • 接触後は14日間の健康観察(体温測定など)を行い、体調不良時は医療機関を受診し、ペットの状態を伝えましょう。

※この対応はSFTSが疑われる犬や猫がいる場合に限ります。健康なペットに日常的に行う必要はありません。

2025年7月現在の状況と今後の見通

日本国内では、SFTSは2013年以降、毎年100~120件のヒト感染例が報告されています。動物では、猫の感染が毎年100件前後報告され、2025年3月末時点で累計1,013件、犬は64件とされています。

出典:国立感染症研究所「動物由来感染症の発生状況(2025年3月)」https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts

以前は西日本での報告が多かったSFTSですが、現在は関東を含む東日本でも報告が増加しています。
さらに、気候変動の影響でマダニの活動時期が長くなる可能性があり、年間を通じての注意が必要です。

飼い主としての行動ポイント

SFTSは、犬や猫、そして人にとっても重大な感染症です。柏市では現時点での発生報告はありませんが、近隣地域での感染を受け、日頃からの備えが大切です。

  • 室内飼育の徹底(特に猫)
  • マダニ予防薬の継続使用(犬・猫ともに)
  • 散歩や屋外活動後のマダニチェック
  • ペットの体調変化への早期対応
  • 感染が疑われる場合の冷静な対応と感染対策

これらを心がけることで、大切な家族の健康を守ることができます。不安な点がございましたら当院にお気軽にご相談ください。愛犬・愛猫にとって最適な健康管理を一緒に進めていきましょう。 岡部獣医科病院では、猫に配慮した診察や待合を心掛けております。