犬や猫の異物誤飲・中毒について知っておきたいこと


犬や猫は私たちの大切な家族ですが、好奇心旺盛なあまり思わぬものを口にしてしまうことがあります。おもちゃの破片や食べ物の芯などの「異物誤飲」、そしてチョコレートや玉ねぎといった「中毒性のある食べ物」によるトラブルは、動物病院でも来院頻度の高い相談のひとつです。

「少しだけなら大丈夫かな?」と思った行動が、大きな病気や命の危険につながることも少なくありません。そこで今回は、犬や猫の誤飲や中毒で見られる症状、代表的な原因、動物病院での治療方法、そして飼い主さんが自宅でできる予防の工夫についてわかりやすく解説します。

ペットの健康と安心を守るために、ぜひ日常の参考にしてください。

どんな症状だと異物や中毒を疑うべき?

犬や猫は好奇心旺盛で、思わぬものを口にしてしまうことがあります。以下のような症状が見られるときは 異物の誤飲や中毒が疑われます。

  • 急に吐き始める、何度も吐こうとする
  • よだれが多く出る、口をくちゃくちゃさせる
  • 食欲が急に落ちる、元気がない
  • 下痢や血便が出る
  • 呼吸が荒い、ふらつき、けいれんなどの神経症状
  • お腹を痛そうに丸めている、触ると嫌がる

特に 急激に悪化する症状 は中毒性の可能性が高く、早急な受診が必要です。

犬猫が飲み込んでしまう異物や中毒の原因

動物病院で来院の多いケースをまとめると、次のようなものがあります。

異物の種類

  • おもちゃの破片、ゴムボール、紐や布
  • 竹串、魚の骨、トウモロコシの芯などの食べ物関連
  • 飼い主の靴下や下着など布類

紐や尖ったものは腸閉塞や穿孔の原因になるため特に危険です。

中毒の種類

  • チョコレート、ブドウ・レーズン(犬で特に危険)
  • ネギ類(玉ねぎ、にんにく、長ねぎ)(猫・犬ともに貧血の原因)
  • キシリトール入りガム(低血糖や肝障害)
  • 観葉植物(ユリ、ポトス、アイビーなど)
  • 薬剤・農薬・殺虫剤(人の薬も含む)

少量でも危険なものが多く、飼い主さんが「これくらい大丈夫」と思っても重症化することがあります。

病院での診察と治療方法

誤飲や中毒が疑われる場合、動物病院では以下のような流れで診察・治療が行われます。

  1. 問診:飲み込んだ可能性のある物や時間を確認
  2. 画像診断(レントゲン・エコー):異物の位置を特定
  3. 血液検査:中毒物質による臓器障害の有無を確認

治療方法の例

  • 吐かせる処置(飲み込んですぐの異物や中毒物質の場合)
  • 内視鏡での取り出し(胃に残っている場合)
  • 外科手術(腸に詰まった場合や鋭利な異物の場合)
  • 点滴や投薬による支持療法(中毒物質による臓器ダメージの回復をサポート)

治療が早ければ早いほど回復が早く、手術を避けられることもあります。

自宅で気をつけること

異物や中毒のリスクを減らすために、日常生活で次のことに注意しましょう。

  • 食べ物はテーブルや台所に置きっぱなしにしない
  • ゴミ箱はペットが開けられないフタ付きのものを使用
  • おもちゃはサイズを選び、壊れたらすぐに処分
  • 観葉植物や薬剤は手の届かない場所に置く
  • 「ちょっとだけなら大丈夫」という気持ちは危険

また、「何かを飲み込んだかもしれない」時点で動物病院に連絡することが大切です。時間との勝負になるケースが多いため、迷わず相談しましょう。

犬や猫に危険な食べ物リスト

飼い主さんにとってひと目で分かるように、犬・猫に危険な食べ物リストを表形式でまとめました。

食べ物危険度主な症状特に注意が必要な動物
チョコレート(カカオ)★★★★☆嘔吐、下痢、興奮、けいれん、不整脈犬(特に危険)
ブドウ・レーズン★★★★☆嘔吐、下痢、急性腎不全
玉ねぎ・長ねぎ・にんにく(ネギ類)★★★★☆赤血球破壊による貧血、血尿、元気消失犬・猫
キシリトール(ガム・お菓子)★★★★★急激な低血糖、肝障害、けいれん犬(少量でも危険)
アルコール(酒・発酵食品)★★★★☆嘔吐、昏睡、呼吸抑制犬・猫
アボカド★★★☆☆嘔吐、下痢、心臓や呼吸への影響犬・猫
ナッツ類(特にマカダミアナッツ)★★★☆☆嘔吐、ふらつき、筋肉の震え
カフェイン飲料(コーヒー・紅茶・緑茶)★★★★☆興奮、不整脈、けいれん犬・猫
生のイカ・タコ・貝類★★☆☆☆消化不良、ビタミンB1欠乏症
生の魚(特に青魚)★★☆☆☆下痢、ビタミンB1欠乏症
骨付き肉(鶏骨・魚の骨)★★★☆☆喉や腸に刺さる、腸閉塞犬・猫
牛乳(大量摂取)★★☆☆☆下痢(乳糖不耐症)犬・猫
ぶどうパンやレーズン入りパン★★★★☆腎障害、嘔吐

まとめ

犬や猫の誤飲や中毒は、動物病院で非常に多いトラブルです。

  • 吐き気・元気消失・神経症状などは要注意
  • 異物(おもちゃ・紐・食べ物の芯)や中毒(チョコレート・玉ねぎ・薬剤など)が代表的
  • 病院では吐かせる処置や手術、点滴治療が行われる
  • 自宅では食べ物や危険物を管理し、万一のときは早急に病院へ

ペットの安全は飼い主さんのちょっとした配慮で守ることができます。普段と様子が違うなど少しでも気になることがございましたら岡部獣医科病院までお気軽にお問い合わせください。