犬の避妊手術
愛犬に避妊手術をすべきかどうか悩まれる飼い主さまも多いので、今回は犬の避妊手術についての主なポイントをご紹介します。
まず犬の避妊手術は、愛犬の「望まれない妊娠を防ぐ」ことや卵巣、子宮、膣などの疾患の予防および治療するための「病気の予防および治療」を目的としています。日本では、卵巣と子宮を取り除く手術「卵巣子宮摘出術」が一般的です。
避妊手術の目的
- 妊娠の防止: 望まれない妊娠を防ぐため。
- 健康の向上: 子宮感染症(子宮蓄膿症)や卵巣・子宮の腫瘍のリスクを低減させるため。
- 行動の変化: 発情期の行動、例えば不安定な行動や鳴き声、家出の傾向などを抑えること。
また、避妊手術によって乳腺腫瘍の予防にもつながります。予防効果としては初回発情前に手術をした場合は99.95%の予防に、3回目の発情前までの手術でも74%もの予防効果が期待できます。
手術のタイミング
- 当院では一般的に、生後5〜6ヶ月の手術をおすすめしています。ただし、犬の種類や健康状態によって最適なタイミングは異なりますので、まずは獣医に相談が必要です。
手術の手順
- 手術は全身麻酔で行われます。また、術後の感染防止のため、傷口の管理も大事となります。
リスクと注意点
- 全身麻酔や手術そのものに伴うリスクもありますが、適切な管理のもとではリスクは最小限に抑えられます。健康な犬であればリスクはとても低いとされています。
- 一部の犬では、避妊手術後に太りやすくなることがあります。これは、避妊手術によってホルモンバランスが変化し、新陳代謝が低下するためです。その結果、エネルギー消費が減少し、以前と同じ食事量でも体重が増えやすくなります。 避妊手術後に体重が増えるのはよくあることですが、適切な管理を行うことで健康的な体重を維持することが可能ですのでご安心ください。
術後のケア
- 傷口を舐めないように、エリザベスカラー(首まわりに巻く円錐台形状の保護具)もしくは術後服をつけることがあります。
- 指示された薬をしっかりと投与し、定期的に傷口の状態を確認することが必要です。
手術時間について
犬の避妊手術の所要時間は、通常30分から1時間程度です。
具体的な手順としては、まず全身麻酔をかけてから、腹部を切開し、卵巣と子宮を摘出します。その後、出血が止まったことを確認してから、切開部を縫合します。手術が終わった後は麻酔から完全に覚めるまでしっかり観察をいたします。
手術後のよくある犬の様子
手術後は下記のような症状や行動が見られることがあります。
1.麻酔からの回復
- ぼんやりした状態
手術直後は、麻酔の影響で犬がぼんやりしていることが多いです。ふらついたり、反応が鈍かったりすることがありますが、これは数時間以内に改善することがほとんどです。 - 寒さを感じる
麻酔の影響で体温が下がることがあり、寒さを感じることがあります。暖かい場所で休ませてあげると改善します。
2. 痛みや違和感
- 痛み
手術後は2~3日間、痛みを感じることがあります。当院では希望があれば痛み止めを処方いたします。 - 違和感
傷口に違和感を感じるため、舐めたり、引っかいたりしようとする場合があります。このような場合にはエリザベスカラー(首まわりに巻く円錐台形状の保護具)や術後服を使うと効果的です。
3. 食欲の変化
- 食欲減退
手術後すぐは食欲が一時的に減退することがあります。1~2日以内に通常の食欲に戻ります。 - 水分補給
水を飲む量が減ることもありますが、無理に飲ませる必要はありません。徐々に回復していきます。
4. 活動レベルの低下
- 疲れやすさ
手術後は疲れやすくなり、通常よりも眠りがちになることが多いです。これも回復過程の様子ですので、無理に動かさず休ませてあげましょう。 - 散歩や運動の制限
傷口が治るまで、激しい運動は避けるようにしましょう。通常は1~2週間ほどで通常の活動に戻ってきます。
5. 傷口の管理
- 赤みや腫れ
傷口周りに赤みや腫れが見られることがありますが、軽度であれば通常の反応です。ただし、過度な腫れや膿が出る場合は、獣医に相談してください。 - 清潔に保つ
傷口が汚れないよう、清潔な環境を保つことが重要です。必要に応じて消毒を行います。
6. 精神的な変化
- 不安やストレス
手術の影響で一時的に不安を感じたり、ストレスを抱えたりすることがあります。優しく声をかけたり、安心できる環境で、落ち着かせてあげましょう。
岡部獣医科病院では年間平均1000件以上の手術を行っているため、さまざまなケースを想定して行うことができます。これまで培ってきた経験と知識で、安心で安全な手術に努めております。 愛犬の避妊手術でお悩みの方はお気軽にご相談ください。