「最近、愛猫がジャンプしない…」そのサイン、見逃さないで!猫の関節炎の隠れた痛みと最新治療
「うちの子、前はあんなに軽快にキャットタワーに飛び乗っていたのに…」「最近は寝てばかりで、あまり遊ばなくなったな」
もし、あなたの愛猫がこのような変化を見せているなら、それは加齢による衰えではなく、関節の痛みである「関節炎(変形性関節症)」が原因かもしれません。
猫は痛みを隠すのが非常に上手な動物です。犬のようにあからさまに「足を引きずる」といった症状が出にくいため、飼い主さんが気づいた時には病気が進行しているケースがほとんどです。
今回のコラムでは、猫の関節炎について自宅で出来る対策から病院での治療法まで解説します。
猫の隠れた関節炎のサインと、痛みを解放する最新治療法
当院では、猫の関節炎を早期に発見し、その子に合った最適な治療をご提案しています。
1. 関節炎の「隠れた」特徴と症状
猫の関節炎の多くは、加齢に伴い関節の軟骨がすり減り、変形することで炎症と痛みが起こる「変形性関節症」です。
以下のようなわずかな行動の変化が、痛みのサインです。
- 活動性の低下
以前ほど遊ばなくなった、寝る時間が増えた。 - ジャンプを嫌がる
高い場所(キャットタワー、家具)への上り下りをためらう、届く高さでも低い場所を選ぶようになる。 - グルーミング(毛づくろい)の変化
痛む関節の周辺を舐めなくなるため、特定の部位の毛並みが乱れる。 - トイレの変化
トイレの縁をまたぐのが辛くなり、排泄を失敗しやすくなる。 - 性格の変化
触られるのを嫌がる、怒りっぽくなる、攻撃的になる。 - 爪の変化
体重をかけなくなった足の爪が太くなったり、伸びすぎたりする。
もしこれらのサインに心当たりがあれば、まずはお気軽にご相談ください。当院では触診やレントゲン検査などで関節の状態を確認し、診断を行います。
2. 飼い主さんが自宅でできる対策(環境整備と体重管理)
猫の関節炎は病院での治療と並行して、ご自宅でのケアが非常に重要になります。
- 可能な範囲内での体重管理
体重が増えると、その分関節への負担が大きくなるため、食事の見直しで適正体重を維持することが進行予防になります。 - 環境整備
- ジャンプが必要な場所にステップやスロープを設置する。
- トイレは縁の低いものに変えて、出入りしやすくする。
- 床材をカーペットやコルクなど、滑りにくい素材にする。
- 適度な運動
痛みが強くない範囲で、遊びなどを通して関節を支える。運動はたっぷりではなく、その子のペースで少しだけを基本に心がけましょう。
3. 病院での治療法:最新の「ソレンシア」と従来の治療
関節炎の治療は、「痛みの緩和」が基本です。近年、猫の関節炎治療は大きく進化しました。
【最新治療】モノクローナル抗体製剤「ソレンシア(Solensia)」
「ソレンシア」は、猫の変形性関節症による痛みを緩和するために開発された、世界初・唯一のモノクローナル抗体(mAb)製剤です。
- 即効性と持続性
1回の皮下注射で約1ヶ月間効果が持続します。 - 高い安全性
痛みの原因物質であるNGF(神経成長因子)を狙い撃ちするため、従来の飲み薬に比べて腎臓や肝臓への負担が少ないとされています。高齢猫にも使いやすいです。 - 費用/月1回
薬価が比較的高価です。(1回あたり10,000円前後)
【従来の治療】非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)
痛みが強い場合などに使用される、炎症と痛みを抑える飲み薬です。
- 炎症と痛みの緩和に効果があります。
- 長期的に使用すると、腎臓や消化器に負担がかかる懸念があります。
- 費用はソレンシアに比べて安価です。(月額3,000円〜5,000円程度)
当院では、猫の腎機能や健康状態を細かくチェックしながら、NSAIDsの投与量や使用期間を慎重に判断しています。
ポリ硫酸ペントサンナトリウム製剤(カルトロフェン®など)
関節の血流を良くしたり、軟骨を守る成分の注射。週1回 × 4回 のコースで行うことが多いです。
- 注射部位の腫れに注意が必要です。
- まれにアレルギー反応を起こす場合があります。
- 費用:1回 約2,200円前後。
ガバペンチンなどの補助的な痛み止め
ソレンシア® や NSAIDs だけで痛みが十分に取れない場合、追加で使うことがある補助的な鎮痛薬です。
- ガバペンチン:神経の過敏さを抑える
- アマンタジン・アミトリプチリン:難治性の慢性痛で補助的に使われる
- 眠くなる、ふらつく、活動性が落ちる場合は量を調整します。
※どれも「最初から使う薬」ではなく、他の治療で足りないときに追加する薬 です。
サプリメント(アンチノール®プラス など)
オメガ3脂肪酸・緑イ貝由来の成分が、炎症や血流をサポート。
- 副作用がほとんどない
- 高齢猫や持病がある猫にも使いやすい
- 軽い関節炎ならサプリだけで様子を見ることもある
- ごくまれに軟便・吐き気を起こす場合があります。
- 費用:1か月約3,00~4,000円。
最後に
猫の関節炎は、治療によって症状を緩和し、愛猫の生活の質を大きく向上させることができます。
「年を取ったから仕方がない」と諦めずに、まずは当院にご相談ください。柏市にお住まいの皆さまの大切なご家族のために、最新の情報と最適な治療をもってサポートさせていただきます。
愛猫の「動きたい!」という気持ちを、私たちと一緒に取り戻しましょう。
ご心配なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。



