犬の乳腺腫瘍 症状や対策を解説


大切な家族であるワンちゃんの乳腺にしこりや塊ができている、乳腺周辺に腫れや赤みがあるなどの症状はございませんでしょうか?そんな場合は乳腺腫瘍が疑われます。

犬の乳腺腫瘍とは、特に未避妊の雌犬に多く見られる腫瘍の一種で、乳腺に発生する異常な細胞増殖を指します。乳腺腫瘍には良性と悪性のものがあり、その約50%は悪性腫瘍(がん)といわています。

1. 原因について

  • ホルモンの影響:乳腺の細胞が雌性ホルモンに晒されることが関与しており、避妊手術を受けていない雌犬がリスクが高くなります。初回発情期前に避妊手術を行うと、乳腺腫瘍の発生リスクがほぼゼロに近くなると言われています。
  • 年齢:高齢の犬ほど発生リスクが高まります。特に7歳以上の犬ではリスクが増加すると報告されています。
  • 犬種:ミニチュア・ダックスフント、シー・ズーなどの特定の犬種は乳腺腫瘍にかかりやすいとされています。

2. どんな症状が起こる?

  • 乳腺に小さなしこりや塊ができる。
  • しこりや塊が無くても、乳腺周辺の腫れや赤みのみがあることもある。
  • 悪性の場合、急に大きくなったり潰瘍や出血を伴うこともあります。
  • 腫瘍が大きくなると、他の組織や肺などの臓器に転移し痛みや呼吸の悪化が見られることがあります。

上記のような症状が確認できたら、すぐに獣医師に相談してください。小さいしこりの場合は手術で完治できることが多いです。

3. 治療法について

  • 手術:乳腺腫瘍は基本的に外科的に摘出するのが標準的な治療法です。悪性の場合、早期発見・治療が重要です。
  • 化学療法:手術後や転移の可能性がある場合には、抗がん剤治療が行われることがあります。

4. 予防策は?

  • 早期避妊手術: 初回発情前に避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍のリスクを大幅に低減できます。
  • 定期的な健康チェック: 触診や定期的な検診で早期発見を目指すことが重要です。

乳腺腫瘍は早期に発見し、適切に治療すれば予後が良好が多いです。

では、犬の乳腺腫瘍に対する普段からでできる対策はどんな事でしょうか? まずは、予防や早期発見に重点を置くことが重要です。以下に、家庭でできる具体的な対策をまとめました。

1. 早期避妊手術

  • 最も効果的な予防策は、初回発情期前に避妊手術を行うことです。これにより、エストロゲンなどのホルモンが乳腺に影響を及ぼすリスクが大幅に減少し、乳腺腫瘍の発生率を著しく低下させることができます。
  • 発情後でも避妊手術は乳腺腫瘍のリスクを軽減できますが、初回発情前の手術が最も効果的です。

避妊手術についてはこちらの記事もご覧ください。

2. 定期的な触診

  • 定期的な乳腺の触診は、家庭でできる早期発見の方法です。乳腺腫瘍はしこりとして現れるため、乳房部分を指で優しく触り、異常なしこりや腫れがないかを確認しましょう。
  • チェックの頻度は月に1回程度、犬がリラックスしている時に行うとよいでしょう。もししこりや異常が見つかった場合は、すぐに動物病院で診察を受けてください。

3. 適切な体重管理

  • 肥満は乳腺腫瘍のリスクを高めることが知られています。犬が健康的な体重を維持できるようにバランスの取れた食事を与え、適度な運動を行うことが大切です。
  • 適切な食事量や運動の頻度については、獣医と相談し、犬の年齢や犬種に応じた管理を心がけましょう。

4. 健康チェックを習慣化する

  • 定期的な獣医による健康診断を受けることで、腫瘍や他の病気の早期発見につながります。特に、7歳以上の犬になると乳腺腫瘍のリスクが高まるため、年に1~2回は健康診断を受けることをおすすめします。

5. ホルモン治療を避ける

  • ホルモン剤を使用する避妊や発情抑制のための治療は、長期的に乳腺腫瘍のリスクを高める可能性があります。避妊手術が可能な場合は、ホルモン療法の代わりに外科的な避妊を選択することが推奨されます。

6. 高齢犬の健康管理

  • 高齢犬は特に乳腺腫瘍のリスクが高いため、生活環境のストレス管理や健康管理を徹底することが重要です。適切な栄養や運動、ストレスの少ない環境を整えることが、結果的に全般的な健康維持にもつながります。

まとめ

家庭でできる対策としては、早期避妊手術が最も効果的ですが、定期的な触診や健康管理も早期発見のために非常に重要です。早期発見によって、腫瘍が小さく、転移する前に治療を行うことができれば安心です。大切なワンちゃんの健康状態が気になる方はお気軽に当院にご相談ください。

〜岡部獣医科病院〜
岡部獣医科病院は昭和21年に開院した動物病院です。
ペットとその家族が最良と思える治療へ導くことを心がけています。 次世代の獣医師教育にも力を入れ、スタッフそしてその家族も幸せになれる病院を目指しています。