犬のリンパ腫と向き合うために -診断を受けた飼い主さんへ-


リンパ腫は、犬で最も多くみられる悪性腫瘍のひとつです。 血液の細胞であるリンパ球が腫瘍化して全身に広がる病気で、首やわきの下、足の付け根などのリンパ節が腫れて気づかれることが多いです。

「リンパ腫」と一言でいってもいくつかのタイプがあり、それによって症状や治療効果、経過が異なります。今回は犬のリンパ腫について解説します。

犬のリンパ腫のタイプと特徴

リンパ腫とは、血液の細胞である「リンパ球」が腫瘍化し、リンパ節や体のさまざまな臓器に増えていく病気です。

犬のリンパ腫は下記のタイプと特徴があります。

  • 体のリンパ節にできるタイプ(多中心型) もっとも多く、首や足の付け根のしこりが大きくなって気づかれることが多いです。
  • お腹にできるタイプ(消化管型) 下痢や嘔吐、食欲不振、体重減少などが目立ちます。
  • 胸の中にできるタイプ(縦隔型) 呼吸が苦しくなったり、水(胸水)がたまることがあります。
  • 皮膚にできるタイプ(皮膚型) 皮膚に赤みやしこりが出て、かゆみや潰瘍になることがあります。

主な治療法

リンパ腫は全身に広がる病気のため、抗がん剤治療(化学療法)が基本です。 とくに CHOP療法 という治療は多くの犬で効果があり、腫瘍を小さくし、症状を和らげて生活の質を高めることができます。

ステロイド薬(プレドニゾロン)だけでも一時的に腫瘍を抑えることはできますが、効果は短く、平均すると1か月程度といわれています。

副作用について

「抗がん剤=強い副作用」というイメージをお持ちの方も多いですが、犬の抗がん剤治療では人に比べて副作用が軽いことが多いです。

  • 吐き気や下痢、食欲不振
  • 白血球の減少による発熱

こうした症状はありますが、予防薬や早めの対処でコントロールできます。

「抗がん剤で亡くなる」ことは非常にまれで、むしろ病気そのものの進行が問題になることが多いです。

今後の見通し

治療をしない場合、数週間~2か月で命に関わることが多いとされています。

一方で治療を行えば、

  • 一般的なタイプ(多中心型B細胞性):平均して約1年前後
  • ゆっくり進行するタイプ(低悪性度):2年以上元気に過ごすケースもあり

治療によって大きく生活の質や過ごせる時間を変えることができます。

飼い主さんが不安に思うこと

リンパ腫と診断されたとき、飼い主さんからよく伺うのは下記のような不安です。

  • 「治るのかどうか」
  • 「副作用がつらいのではないか」
  • 「治療しなければどうなるのか」
  • 「あとどれくらい一緒にいられるのか」

根治は難しい病気ですが、治療によって症状を改善し、良い時間を作ることはできます。副作用も予防と対応で多くは乗り越えられます。

飼い主さんへのメッセージ

リンパ腫の診断を受けたとき、「どうすればいいのか」「何を選ぶべきか」と強い不安を抱かれるのは当然のことです。

当院では、診断や治療の選択だけでなく、飼い主さんとわんちゃんがどう過ごしていくか という部分まで一緒に考えていきたいと思っています。

  • 「積極的に治療したい」
  • 「副作用が心配だから無理のない範囲で」
  • 「できるだけ自然に、でも苦しませたくない」

私たち岡部獣医科病院は、診断から治療の選択、そして日々のサポートまで、愛犬とご家族が安心して過ごせるよう、全力でサポートいたします。