猫の避妊手術のメリットとデメリット
前回、犬の避妊手術について触れましたが、今回は猫の避妊手術についてお伝えさせていただきます。
猫の避妊手術は、望まぬ妊娠を防ぐだけでなく、卵巣や子宮の病気や乳腺腫瘍の予防のために行います。猫の乳腺腫瘍は85~95%が悪性です。一般的に手術では卵巣と子宮を取り除きます。手術を行うことで、猫は発情期がなくなり、妊娠することはなくなります。また、避妊手術には健康上のメリットも多くあります。
1.避妊手術のメリット
- 健康維持: 避妊手術を行うことで、卵巣や子宮の病気(特に子宮蓄膿症や卵巣の腫瘍など)を予防できます。また、乳腺腫瘍のリスクも大幅に減少します。
- 行動の改善: 発情期に伴う過剰な鳴き声やマーキング行為がなくなります。また、発情期中のストレスや外出したがる行動も軽減されます。
- 猫の繁殖制限: 不要な繁殖を防ぎ、飼い主が管理しきれない子猫が増えることを防ぎます。
2.避妊手術のデメリット
では、デメリットはどんなことがあるのかをご説明します。
手術のリスク
- 麻酔のリスク
手術は全身麻酔下で行われるため、麻酔に対するリスクがあります。特に高齢の猫や健康状態に問題がある猫では、麻酔の副作用や合併症が発生する可能性が高まります。 - 手術後の合併症
手術後に感染症や出血、傷口の炎症などの合併症が発生することがごくまれにあります。その場合は適切な処置を行います。
行動の変化
- 中には避妊手術後に性格や行動が変わることがあります。例えば、以前よりもおとなしくなったり、逆に活発になることもあります。
体重の増加
- 避妊手術を行った猫は、ホルモンの変化によって代謝が低下し、体重が増えやすくなることがあります。そのため、手術後は食事管理や運動量に注意が必要です。
3.手術の時期
猫の避妊手術は、生後6ヶ月頃が一般的なタイミングとされていますが、当院では、5〜6ヶ月齢時に行うことを推奨しています。
4.手術の流れ
- 麻酔: 手術は全身麻酔下で行われます。手術前に、血液検査や健康チェックが行われ、麻酔に耐えられるか確認します。
- 手術: メス猫の腹部を切開し、卵巣と子宮を摘出します。手術自体は比較的短時間で終了します。
- 回復: 手術後、猫は数日間安静が必要です。通常、1週間ほどで回復します。
5.手術後のケア
手術後は、猫が手術部位を舐めないようにエリザベスカラーまたは術後服を装着することが推奨されます。
避妊手術は猫の健康と行動に大きなメリットをもたらします。適切な時期に手術を行い、術後のケアもしっかりと行うことで、猫の生活の質が向上します。
6.見落としがちな避妊手術と同行避難の関係
あまり知られていませんが、災害時の避難において、避妊手術をしていない猫が同行できない可能性もあります。避難場所のルールや管理状況によって異なりますが、以下にその点について詳しく説明します。
- 避難所のルール: 一部の避難所や施設では、衛生管理や他の避難者とのトラブルを避けるため、避妊・去勢手術をしているペットに限り受け入れる場合があります。避妊手術をしていない猫は、発情期に鳴き声が大きくなったり、他の動物とトラブルを起こすリスクがあるため、受け入れを制限されることがあるかもしれません。
- 安全管理: 避妊手術をしていない猫は、発情期に外に出たがる傾向が強いため、避難中に脱走のリスクが高まります。これも、避難所での受け入れが難しくなる要因です。
- 他の動物との関係: 避妊手術をしていない猫が他のペットと一緒にいる場合、発情期に異性の猫や他の動物との間でトラブルが発生する可能性があり、それが避難所での受け入れに影響することがあります。
柏市ではペットの避難について下記のページに記載があります。 ガイドラインにも災害に備えた日ごろからの準備の例として避妊について触れていますので、事前に確認をしておくと良いでしょう。
まとめ
避妊手術には、猫の健康や行動に関するリスクが含まれますが、これらのデメリットは通常、手術によるメリットと比べて小さいと考えられます。岡部獣医科病院では年間平均1000件以上の手術を行っているため、さまざまなケースを想定して行うことができます。これまで培ってきた経験と知識で、安心で安全な手術に努めております。 愛猫の避妊手術でお悩みの方はお気軽にご相談ください。